特集:自転車の保険を考える


警察庁の自転車事故の発生状況(平成21年)を見ると、平成21年の自転車が当事者となった交通事故は、15万6,373件となっており、交通事故全体の21.2%を占めているそうだ。
10年前(平成11年)と比較すると、1.2%(1,863件)の増加になっており、構成率は18.2%から3ポイント増えている。
交通事故全体の件数は10年間で10万件以上も減っているにもかかわらず、自転車の事故件数が上昇しているということから、大幅ではないが確実に自転車事故は増えていると言えよう。なんせ、1日に428件以上も起きているのだから人ごとではない。いつ自分が当事者になるのか心配にもなる。そこで、自転車事故に対応する保険について調べてみた。


自転車保険とは、損害保険会社で扱う「自転車総合保険」と言う単独で入れる保険のことだ。しかし、今はほとんど存在しない。以前はあったのだが、保険会社の都合で取扱を止めてしまっている。あるいは、積極的に宣伝していないため見つけるのが大変なのだ。取り扱っていたとしても、補償の割に保険料が高すぎて現実的でない場合が多い。
現時点で単独で入れる保険で自転車関連というと、「TSマーク付帯保険」と「JCA自転車総合保険」あたりになる。それ以外の方法では、各種サービスに付帯するものや、各種保険の特約になっているものになり、いわゆる「個人賠償責任保険」という保険になる。
それぞれ、特徴があるので、以下にざっくり説明する。


 

TSマーク付帯保険

TSマークのついた自転車店で点検してもらい貼付。TSマークの貼られた自転車を運転中、事故を起こした場合は、死亡、重度後遺障害に対する傷害保険金や賠償責任保険金が支払われる。
最高限度額は、1,000万円と2,000万円の2種類。
保険料は点検をする自転車店により違う。整備代を含め2,000円〜3,000円くらいが相場だと思われるが、お店によって価格が違うため確認が必要だ。
保険料の割には補償額が少なく、補償範囲も、死亡・重度後遺障害が1~7級までに限るなど、範囲が狭いと言われている。
ちなみに、後遺障害等級は14級まであり、8級では片目が失明か視力0.02以下、あるいは脊髄に運動障害が残るもの等々、9級では両目の視力が0.6以下、あるいは片方の聴力を失う等々の障害になる。こういった障害が補償されないので、やや不安が残るわけだ。


 

JCA自転車総合保険

JCA(Japan Cycling Association/日本サイクリング協会)の会員(年会費4,000円)になることで受けられる特典。
賠償責任補償限度額は、3,000万円。
さらに、追加保険として、2,400円/年を払うと、入院補償などが追加されるが、賠償限度額は3,000万円のまま。
JCA会員の他の特典に興味があるのなら良いが、単体では、補償限度額が少なく、割高なイメージがある。また、加入月から3月までの期間×200円が追加保険料となるため、4月なら12ヶ月分で2,400円だが、3月だと1ヶ月分しかないので、200円になる。


 

Yahoo!プレミアム会員専用保険「ちょこっと保険」

Yahoo!プレミアム会員の方のみ加入でき、ケガの補償や他人への賠償など、必要な補償を必要な分だけ選んで、自由に設計できる保険。
「自転車プラン」が用意されており、補償額が1,000万円/3,000万円/5,000万円の3タイプで、保険料はそれぞれ月額390円/730円/1,070円となる。
Yahoo!のオススメは、ミディアムセットの補償額3,000万円(保険料月額730円)なのだが、やや割高な感じ。でも、カスタマイズして、スモールセットのまま補償額を5,000万円にすれば、月額410円になり割安にできる。さらに、本人の入院保障を削ればもっと安くなるので、かなりお得になる。
しかし、Yahoo!プレミアム会員にならないと入れないので、別途月額346円が必要になる。つまり、Yahoo!プレミアムの特典を利用しない場合は、トータルとして割高になってしまうのだ。


 

JCBカード「ちょこっとガード」生活ほっとコース[個人賠償責任保険]

自転車に限らず、日本国内において、日常生活中の偶然な事故により、他人にケガをさせたり、他人のものを壊したため、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償。
JCBカードの会員であれば、月額保険料が200円で、補償限度額は1億円とお得感がある。


 

イオンカード「家族賠償責任プラン」

世界中どこでも日常生活中に、誤って他人にケガをさせたり、他人のものを壊したりして賠償責任を負った場合に補償。
イオンカード会員であれば、月額240円の保険料で、家族全員を最高1億円まで補償。
JCBカード「ちょこっとガード」とほぼ同じ保険で、イオンカード会員であればお得。


 

ダイナースクラブカード「ライアビリティプラン」

本人や生計を共にする同居の親族、ペットが思わぬ事故を起こし、他人にケガをさせたり、物品を破損させたとき、最高1億5千万円まで補償。
年間4,960円(月額約413円)の保険料でやや高いが、補償限度額が大きいのがポイント。


 

各種保険の「個人賠償責任」特約

火災保険や損害保険、自動車保険には、「個人賠償責任」という特約が付けられる場合がある。
例えば、CO・OP共済《たすけあい》では、月額120円で最高1億円の賠償責任保険が付けられる。保障対象は、契約者(記名被保険者)、契約者の配偶者、契約者または配偶者と同一生計の同居の親族・同一生計の別居の未婚の子までなので、かなりお得だ。
また、自動車を持っているなら、自動車保険の個人賠償責任特約を確認してみると良い。年額(1時払い)1,000円前後で、5,000万円以上の補償が受けられるようなので、こちらもお得だと言える。
ちなみに、筆者が入っている自動車保険会社に問い合わせたところ、個人賠償保険特約を付けた場合、年額(一時払い)870円/940円/1,030円で、5,000万円/1億円/無制限という補償額になっているそうだ。特約の追加は電話でもOKで、電話終了時から補償が開始されるのでとても簡単だ。


 

まとめ

個人賠償責任でポイントとなるのは、月々の保険料と、補償額だ。補償額をどこに設定するかで、保険料は変わってくる。ただ、今時の事例を調べると、相手を死亡させてしまうという最悪のケースを考えた場合、5,000万円程度はあった方が安心と見るべき傾向にある。
総合的に考えると、単独で自転車保険に入るより、クレジットカードに付帯する特約か、各種保険に追加できる個人賠償責任特約を付けるのがベストな選択のようだ。
また、保険に入っていれば、賠償金の支払については保険会社が示談交渉してくれるが、保険に入っていないと示談が成立せずに民事訴訟になる場合がある。
もちろん、保険会社が必ず示談を成立させるとは限らないが、保険に入っている方が圧倒的にメリットがあると言える。
さらに、条件があるが、刑事訴訟になった場合にも影響があるとのことだ。
こうなると、もはや保険に入らない理由が見つからない。
当然だが、事故を起こさないことが一番大切で、安全運転をすることが大事なのだが、もしものことを考え、保険に入るべきだというのが、調べてわかった結論だ。

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